初恋が始まるとき。
 狭い空間の中、この人と2人きりになるのは緊張する。

 この人と2人きりになると毎度何かが起きている気がするから、少し身構えてしまう。

 機械から出てくる明るい声で全く和むこともできず、固まりながらもひとまずコートを脱いで鞄を荷物を置く台に乗せる。

 渋谷さんがこちらを見ると私の前髪を優しく手で整えてくれた。ちょっとそれで触れられるだけでも、鼓動が早くなっている気がする。

 私の顔を見るとふっと優しい表情を零して、前髪から手を離す。


「緊張してる?男とプリクラ撮るの初めて?」

「過去にこんなことあったら、発狂して嫌がってたかと思います」

「今はしないの?」

「23歳のレディーなんで発狂はしませんけど嫌がってはいます」

「ウケる」

「ウケねぇよ」


 仮にも先輩に向かって思わずそんなツッコみをすると、機械がカメラの前に立てと指示をしてきた。

 枠が中々に狭く2人で収まろうとするとかなりの距離感になる。

 2人の肩がぶつかると、渋谷さんはそっと私の肩を抱き寄せてくる。

 その間に写真を撮られプレビューを確認すると、素晴らしい微笑みをしていることには間違いないのだけど、目の大きさに思わず笑った。


「加工やりすぎちゃった、ネットによくいる人みたいになってね?これ」

「なってます。やばいですね、可愛いですよ」

「嬉しくねぇし、別人にも程があるだろ」


 2人でそう言いあいながら次のシーン撮影に移る。

 相変わらず体は自然と密着したままで、意外とこの空気感の楽しさに気にならなくなっていた。


「肌、美白すぎません?プレビューでこれなのに、落書きタイムで更に化粧したり美白にできるんですよ」

「もういらねぇだろ…」


 そう苦笑いする渋谷さんに合わせ、私も思わず笑う。
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