初恋が始まるとき。
「何でご飯?」

「俺の気持ちの少しは伝えておいたし、後はもっと意識するまでガンガンアピールするだけかなって思って」


 エレベーターを待つ場でそんなことを言われ思わず咳き込む。

 会社でそんなことを言うなと言いたいが、それよりも正気?が勝ってしまった。

 咳き込む私を見て「大丈夫そ?」なんて問い掛けてきているが、この男のせいである。


「だ、大丈夫です。少し驚いて」

「普段冷静な優菜ちゃんが取り乱すなんて珍し~」


 そう言いながら到着したエレベーターに乗り込んでいく。
 私も仕方なくそのエレベーターに乗り込みつつ、端の方に押しやられた。

 今日は週明けで忙しいのに、まだ頭はこの人に思考を奪われている。

 週明けは週末の締め作業と、1週間の予測を立てたり、とかいろいろやる事がある。それに加え他の部署からの精算作業も多いため、中々ばたばたするというのに、仕事モードに切り替えられない。

 同じ会社の人と少し変な感じになるだけで、一気にやりづらくなる。

 エレベーターが着くのを待っていると、先に営業フロアに到着する。

 離れ際、私の耳元で「後で連絡する。考えといて、金曜」と囁いた後、そのままエレベーターを降りていった。

 最近あの声を耳元で聞くだけでもいろいろな事を思い出して顔が熱くなる。誰も私を見ていないのに、そんなことも恥ずかしくて「あ~~~~~~」と声を漏らし逆に注目を浴びる羽目になった。

 これだから恋愛に耐性のないポンコツは困る。
 多少男性経験が学生時代にでもあれば、渋谷さんのあんな行動にもいちいち反応しなくて済んだのだろうか。
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