初恋が始まるとき。
「…別にしなくていいよ」


 そう言いながら私の事を抱き寄せ、優しく頭を撫でる。

 その言葉が予想外で目を見開いて渋谷さんを見ると呆れた表情をしていた。


「何だその顔」

「…発情期のお猿なのに?」

「一応先輩って知ってる?」


 呆れながら笑って私の額を弾く。結構な痛みで額を抑えると笑っていた。


「泊まってく?女物の服なんて無いけど」


 そう言いながら立ち上がり別の部屋に行った。

 思っていた通りの展開にはならず、少し拍子抜けしたものの安堵した。
 何故か止まる展開にはなっているけど。

 心配しそうな母に連絡するべきか悩んだけれど、どう連絡すればいいか分からなかった。緊急事態に紬さんに連絡をする。


«今日、紬さんの家に泊まるって設定にしてくれない?»


 いろいろ用事もあって返事は数分後に«どうしたの!?»と連絡が返ってきていた。

 ここでいろいろと説明するのもまた…と悩み、後日説明する事にし、母には予定通り紬さんと兄の家に泊まると説明してきた。

 成人した大人なのだから、連絡なんてしなくてもいいのだろうけど、実家暮らしをしていると母が成人していても女の子なのだからと心配する。だから外泊の時は連絡をするようにしているのだけど、まさか嘘を吐く日が来るなんて思っていなかった。
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