初恋が始まるとき。
 着替え終えてから母と紬さんがキッチンで料理している所に向かう。

 2人で楽しそうに話していて、その内本当に兄のお嫁さんになるであろう紬さんの存在が母も嬉しいようだ。


「おかえり、優菜。早かったね?」

「いつも通りだよ。何作ってんの?」

「今日紬さんが来てくれたから手巻きにしようかなと思って」

「やった~、紬さんのおかげでごちそう~」


 そう言いながら笑って紬さんの肩を掴むと紬さんも笑っている。

 兄はカウンターの向こう側からキッチンを見てきていて、思わず口元を緩ませる。


「いつ結婚すんの?」

「お前には関係ない」

「あるよ~。未来のお義姉様だし?」

「本当お前からかいたいだけだよな、絶対」


 そんな兄の呆れた様子に少し笑うと、私のポケットに入っているスマートフォンが揺れた。

 中を見ると珍しく渋谷さんから連絡が入っていた。
 メッセージを見ると«明日、何時に出社する?»なんて今まで来たことも無い連絡に眉を顰めた。


«いつも通りですけど、何でですか»

«明日、ちょっと遠方に行くから、その前に手続き頼もうと思って~»

«他の人に頼んでください»

«冷たすぎ。笑»


 普段こんな連絡してきたことも無い癖に、今日はやたらと絡まれる事が不思議だった。

 普段から鬱陶しい先輩ではあったけれど、プライベートにまで介入してきたことも無いし、だから放置していたのだ。
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