初恋が始まるとき。
「ま、でも新天地ってわくわくするよな。俺もそうだったし、新しい事を知るのって楽しいし」

「そうかも、ですね」


 渋谷さんの言葉に軽く同意しつつ、私の頭の中ではずっと本田さんの事を考えている。

 会って短期間で恋に入れる人の気持ちってどんなのだろう、とか、自分の様な素直じゃなくて可愛げもない女よりもああいう女性の方が当然良いよな、とか、自分には無い物、できない事を羨んで妬んで捻くれて、どこまでも自己肯定感が失われていく。

 前まで誰かと自分を比べる事なんてなかったのに、いつからか周りの女性と自分を、自分の中で比較するようになっていた。

 それで周りが好きになる人は…、可愛がる人は…、なんて評価の事を考えて、落ち込んで、またそんな自分にも嫌気がさして…、最近は特にこんなことが増えた気がする。

 今日の本田さんがきっかけなんかじゃない。
 これは昨年から少しずつ起きていた事だ。

 考え事をしながらラーメンに手を付けていると、渋谷さんが唐揚げを箸で掴んだまま首を傾げている。


「何か今日暗いな」

「え?いつも通りですよ。会社に来てハイテンションな人間いないでしょ?」

「別にハイテンションかそうじゃないかで、暗いか暗くないかは決まってないだろ。いつもと違う」


 この人の好きであり嫌な所。私のどんな部分にも敏感で気付いてしまう。私の、というかきっと人の気持ちや反応に敏感なのだと思うけれど、今はあまり気付かれたくない場面だった。
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