地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
私は一度だけ、御曹司と呼ばれる人と付き合ったことがあった。

最初は、信じられなかった。

どうして私なんかを選ぶのか、何度も聞いた。

それでも彼は、笑って言った。

「咲だからだよ」

その言葉を、信じてしまった。

一緒にいる時間は穏やかで、優しくて。

このまま、普通に続いていくんだと思っていた。

けれど。結婚の話が出たとき。すべてが変わった。

「一度、お時間をいただけますか」

そう言われて呼び出されたのは、彼の両親だった。

広い応接室。整いすぎた空間。

その中で、私は一人、座っていた。

「あなたのことは聞いています」

丁寧な口調。

けれど、その目はどこまでも冷たかった。
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