地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
ポットの中の水は、まだ静かだ。

沸騰するには、もう少しかかる。

その間。店内は、不思議なくらい静かだった。

他にお客さんはいない。

聞こえるのは、コンロの火の音と、かすかな空調の音だけ。

その静けさの中で。

彼の存在だけが、妙に近く感じられる。

「……この時間に来られることが多いんですね」

沈黙に耐えきれず、言葉を探して口にする。

「仕事が一段落するのが、この時間なので」

「お忙しいんですね」

「そうでもありませんよ」

そう言いながらも、その表情はどこか余裕があって。

忙しさに振り回されている人のそれではない。

「ここに来ると、少し落ち着くので」

ふと、そんな言葉が落ちてくる。

思わず顔を上げた。

「……ありがとうございます」

それ以上の言葉が、うまく出てこない。

ただ、それだけで十分な気がした。
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