無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中


「俺、紺野さんのこと応援したいんだ」 


きらきらまっすぐな目で真剣にそう言われた。


「なんで名字なの? 昨日は羽奈って呼んでたような?」


ふふふ、って声が出ちゃった。なんか久しぶりに声を出して笑った気がする。


「馴れ馴れしいって思われるのやっぱ嫌だから」


ちょっと口を尖らせて、もしかして照れているのかな。


「羽奈でいいよ、呼び捨てで」


「……じゃあ羽奈、よろしく」


なんだかお互い少しくすぐったい。


「でも応援したいってどういう意味? これまでだってずっとそばにいてくれたのに」


「いや、もっと笑顔にしたいっていうか思い出だっていっぱい作りたいっていうか……元気ないじゃん、無理してそうだし」


「そっか。そう見えてたんだね」


まっすぐな眼差しは強がりも意地っ張りもすべてお見通しだったんだ。



「羽奈のこともっといっぱい知りたいし、俺のことも知ってほしいんだ。でも俺のこと捨てるんだろ? どうして?」


率直に聞かれて、高校卒業後の事を話した。習い事漬けの毎日の理由も。
碧葉家のルールで、古いものを持ち込んじゃいけないことも。


この話はとっくに話してあったのに、初めて聞いたみたいにリオ君はぽかんと口を開けた。


「前に話したこと何も覚えてないの?」


「頭ん中が綿だから記憶力悪くて……羽奈は俺と別れるのが嫌で泣いてたんだ?」


「だってリオ君は家族で友達で宝物だもん」


「だったらそんなルール守る必要ないよ」


決して口にしてはいけない言葉をなんのためらいもなく言い放たれて唖然としてしまった。


今までは静かに寄り添ってくれるだけだったのに、私の気持ちに気づいてたんだ。
ずっと言えなかった本音を代弁してくれたみたいで、すごく嬉しかった。


「その婚約者ってどんなやつなの?」


「そういえば碧葉君の写真は見せたことなかったね」


スマホに入っている彼の誕生日パーティーの時の集合写真を見せた。


「完璧な人だからおどおどしちゃうし、すごく人気者だから一緒にいると女子の目も怖くて」


碧葉君はこうしてじっくり眺めてみると、小顔で長身でモデル並みのスタイルで、弓道で鍛えただけあって服の上からでもほどよく筋肉質なのがわかる。


艶々の黒髪は爽やかで品があるし、育ちの良さも賢いのも見ただけでわかってしまう。
碧葉家の自慢のご子息。
絵に描いたような王子様。


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