無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中
「タブレット壊れたんなら他の生徒会のやつらに借りればいいじゃん。それにクラスの奴らのこと、もしかしてわざと避けてる?」
「……だって私って腫れ物だもの」
味方だと思っていたリオ君に心ない発言をされたことがタブレットを割ったことよりも数倍ショックだった。
例えば碧葉君が殿堂入りしてるコンテストの女子部門で私が入賞してるのは
いわゆるお父さんの顔を立てるための組織票だと思う。
学園での私って腫れ物なんだ。
どの親御さんも、権威のあるお父さんに気を遣っている。
会話が下手くそで社交性のない私がいるといつもその場が固くなるんだって、リオ君にもいっぱい話してたのに。
「そんなこと言うなんてなんてひどいよ……」
だって学校での私は緊張の塊。
家柄や親の立場を案じるあまりボロは出せない。
周りに気を遣わせてはいけない。
碧葉君のことを好きな女子に不快感を与えてはいけない。
両家の恥になる行いはできない。
息をとめるように生活してきたつもりでも、碧葉君と関わるとやっぱり注目されてしまうんだ。
「ごめん無神経なこと言って。でも悩むことないよ。俺はほんとの羽奈がどんな子か知ってるし、どんなときも味方だから」
「リオ君は何も悪くないから謝らないで。困らせてごめんね。ありがとう」
リオ君はどんな私もちゃんと見ていてくれたんだ。その言葉でまた頑張れる。
「じゃあ、教室に帰るからもう絶対しゃべっちゃダメだよ」
「それより碧葉以外にも羽奈のこと好きだって男子いっぱいいるよな? すげー見られてんのにまさか気づいてないの?」
「またそういう話?」
マイペースなリオ君のお陰で気が楽になって、もう当分いたずらはしないだろうと安心していたのに、なんと……教室に戻る途中で、いちばん会いたくなかった碧葉君に遭遇してしまった!
「おはよう紺野。もしかしてうちのクラスに寄ってくれた?」
「おはようございます、それが資料はまだで……」
早くも注目を集めてしまっているし。リオ君が余計なことをするかも!
だから思いきって昼休みに作業することをこちらから提案した。
爽やかな笑顔で去った碧葉君の背中を見送り安堵のため息をひとつ。
「ふぅ、焦った」
やっぱり目の前に立たれるの、全然慣れないな。背の高い人特有の威圧感が苦手なのかもしれない。
……なんてことを考えていたら、柱の陰に身を寄せてちょっと離れたところからじーっとこちらを見守っている女子をみつけた。
きっと碧葉君のファンだ。後ろめたい気持ちで彼女の前を通過しようとしたその時。
「ぼとっ」
音ではなく、擬音語が聞こえてぎょっとした。