無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中
「あの……これ落とされました」


足元にはまさかのリオ君が落ちていて、それに気づいた彼女はすぐに拾うと肩の辺りまである髪をはずませてなぜかにっこり笑ってくれた。


「紺野さん。おはようございます」

「おっ、尾崎さんおはようございます!」


話したことのない相手だけれど、彼女の名前は知っている。というか役職の手前ご学友の名前や情報は頭の中に入っている。


咲いたばかりの花のような可憐な笑顔と優しい言葉で心が和んだ。いや、和んでいる場合じゃなかった。今目の前にあるのは非常事態!


「名前、覚えてくださってたんですね。光栄です。これって、文化祭の提出物ですか? 今年は私も小物を出品するつもりなんです」


彼女はリオ君を優しい目で眺めてからこちらに手渡してくれた。


「えと、はい、あの……」


「今日が提出日ですものね。紺野さんの作品、細部までこだわっていて素敵です! 私も初めて羊毛フェルトに挑戦したので参考にさせていただきたいです」


彼女はハムスターの人形を二体、大事そうに持っていた。
そうだ、会話。会話のキャッチボールをしなくちゃ!


文化祭について? 羊毛フェルトについて? どっちも?
どうしよう、何か言おうとすればするほど言葉を見失ってしまう。


「双子ちゃんすごくかわいいね。ほっぺたのピンクってメイク?」


見かねたのか、まさかのリオ君が返事をしてしまった……でも尾崎さんの反応は意外だった。


「そうなんです、よくわかりましたね。お褒めの言葉、すっごく嬉しいです! 紺野さんのくまちゃんもアンティーク調でとっても素敵」


尾崎さんの純粋無垢さと疑うことを知らない清らかな心に救われて、神に感謝せずにはいられなくなった。

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