桜の奇跡
「あいつ、胃がんだったんだ。
未桜ちゃんと別れてから闘病してた」
渡橋君の頬を涙が伝う。

私の目からも涙が溢れ出した。

「何で……何で教えてくれなかったの?」
渡橋君を責めちゃいけないことは、わかってる。

「俺だって何度も何度も説得しようとして。
未桜ちゃんに話して、会ったほうがいいって言った」
渡橋君が真剣なのが伝わる。



「未桜ちゃんに悲しんで欲しくないから、別れたんだよ。

病人が恋人なんて……もう助からない自分がそばにいたら、幸せにしてやれないからって。

あいつはずっと未桜ちゃんのこと好きだったよ。

どんどん痩せてって、管で体繋がれて、別人みてぇになって…

でも、未桜ちゃんの話する時だけは、目が違って。

嬉しそうで」

渡橋君は言葉一つ一つを噛み締めるように言った。
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