極貧孤児に転生したので、親を探して文句を言おうと思う
 彼が来てくれなかったら、この手は確実に血に染まっていた。私を信じてくれたルイーゼ様や殿下、そして彼自身にも顔向けができなくなっていたことだろう。

(でも、あの力は……)

 あの時の自分は、明らかに正気じゃなかった。……というより、アンジェリカを圧倒した力に、頭の奥深くから身体の全てに沁み込んでいったあの声は――多分。

「戻ろう。僕も自分の責任を放り出してきてしまった。指揮官失格だな……。とはいえ、向こうを出るときにはもうほぼ決着はついていた。さすがにあれから何か起こることは考えにくい……シーリ?」
「い、いえ。なんでもありません。行きましょう」

 馬に乗れる者は乗り、捕虜と怪我人を連れて元の場所へ急ぐ私たち。幸いポピアもリナも命に別状はなさそうだ。アンジェリカは、聖力の発生を防ぐ特別な刻印がされた縄で縛られ、項垂れている。

「……妙だな。戦いの音がする」

 軽いからと私を前乗りさせてくれたアルベール様が、耳を澄ませた。確かに……陣に近づくにつれ大きくなってくるこの物音は勝利の喜びなんかじゃない。恐怖と怒りの入り混じった、争いの響き。
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