極貧孤児に転生したので、親を探して文句を言おうと思う
 その決意を高め、わずかな明かりの中に身体を飛び込ませて……着地。
 勢い余って少々不格好になりながらもなんとか身体を起こした私の口から――。

「……え」

 漏れたのは、空気が抜けたような音だった。
 拍子抜けしたような……平時を思わせる落ち着いた声が静寂(しじま)に響く。

「ああ……やはり来たかシーリ。まあ、あのふたりでは止めきれないと思っていた。奇跡と魔法、ふたつの資質を手にした唯一の存在だからね。君ならばふさわしいだろう……世界の最後を看取るこの舞台の演者としては」
「……ヴァシリーサ様っ!」

 私とよく似た……白い髪を背中で束ねる、堕ちた聖女。魔女帝がその足元に倒れ伏している。
 戦った痕跡はろくにその場にはなく、あるのはただただ燭台の明かりの中で広がる漆黒の空間と……揺らぐ影にてぼんやりと空を漂う、夥しい数の黒ページ。

 そして……その背後には。
 あの虚無の魔物たちを凝縮したような黒く歪な球体が巨大な台座に据えられ……。
 夜空に浮かぶ月と同じ角度から、私たちを見下ろしていた――。
< 649 / 840 >

この作品をシェア

pagetop