敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
蒼玄の手が、白い衣に触れた。

するりと、音もなくほどかれていく。

(……あ……)

思わず、息が詰まる。

肌が外気に触れる感覚。

誰かに見せることなどなかった場所が、あらわになっていく。

羞恥で、体が熱くなる。

逃げ場はないと分かっているのに、指先がわずかに震えた。

「綺麗だ」

低く、耳元で囁かれる。

その声に、びくりと体が揺れた。

「戦の最中に、そなたを見た」

「え……」

思わず顔を上げる。

蒼玄の視線が、まっすぐに私を捉えていた。

「勇敢だった。目を逸らさなかった」

胸が、大きく跳ねる。

(あの時……見られていた……?)

「欲しいと思った」

静かに告げられる言葉。

だがその重さに、息が止まる。
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