敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
「そなたが人質だと聞いて、居ても立ってもいられなかった」

指が頬をなぞる。逃げられない距離。

逃げることを、許されない視線。

その瞬間――唇が重なった。

驚く暇もなく、深く触れられる。

「おまえを、手に入れる」

囁きと同時に、体が引き寄せられる。

強く、逃がさない腕。

(……っ)

初めて触れる熱。知らなかった距離。知らなかった感覚。

思わず声が漏れそうになり、唇を噛む。

「……俺を受け入れろ」

低く、命じるような声。抗えない。

抗うことを許されない。

その中で、ただ必死に息を整える。

最初はただ、戸惑いと痛みに揺れていたのに。

やがて――少しずつ、変わっていく。

蒼玄の動きに合わせて、体の奥が、熱を帯びていく。
< 14 / 30 >

この作品をシェア

pagetop