敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
(なに……これ……)

知らない感覚が、波のように押し寄せる。

「玲華……」

名前を呼ばれる。その声が、やけに近い。

「いい」

低く、抑えた声。

「おまえの体……俺に合う」

その言葉に、胸が震える。否定したいのに、できない。

熱が、逃げ場を失っていく。

「玲華――」

さらに深く、名前を呼ばれる。

「いくぞ。俺を受け入れろ」

その一言に、すべてを絡め取られる。

(……だめ……)

そう思うのに。もう、戻れない。

抗う力が、ほどけていく。

敵国の皇帝。本来なら、憎むべき相手。

「あ、ああああ……」

それなのに――この熱を、拒めない。

静かな夜の中で私は初めて、知ってしまった。

この人から、逃げられないことを。
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