敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
蒼玄が寝台を離れたのは、夕刻になってからだった。

長い時間、離されることなく抱かれていたせいで、体の奥にまだ熱が残っている。

その余韻の中で、私は静かに身を起こした。

隣の部屋から、声が聞こえる。

「相当、お気に召されたようでございますな」

家臣の一人の声。

「ああ。愛ですぎてもう種が残っていない」

蒼玄の低い声が返る。

家臣達の苦笑が聞こえた。

衣を整える気配。けれどその声音には、どこか余裕があった。

「いっそ、後宮の妃にしては如何ですか」

その言葉に、心臓が跳ねる。思わず、寝台から体を起こした。

(妃……?)

足音を忍ばせ、扉をそっと開ける。

広間の向こう。そこには――まだ父がいた。

「さすれば、孟国との絆もより強くなりましょう」
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