敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
家臣たちの声は、どこか弾んでいる。

「これほどまでに寵愛が深いとなれば、お子も望めるはず」

「孟国の血を引く御子であれば、孟の王もお喜びになるでしょう」

その言葉に。父の肩が、わずかに震えた。

そして――ゆっくりと、頭を下げる。

「……どうか、娘をよろしくお願い申し上げます」

その姿に、胸が締め付けられた。

(父上……)

望んで、送り出したわけではない。

それでも、国のために。娘を差し出すしかなかった。

私は思わず、唇を噛みしめた。涙が、こぼれそうになる。

その時ふと、視線を感じた。

顔を上げると――蒼玄が、こちらを見ていた。

まっすぐに。逃がさないように。

「……玲華の心を聞きたい」

低く、静かな声。
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