敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
その日の夜。私と蒼玄の祝言が、厳かに執り行われた。

広間は灯りに満ち、信の重臣たちがずらりと並ぶ。

その最前に――父が座らされていた。

私はゆっくりと視線を向ける。

「父上」

静かに呼びかけると、父は顔を上げた。

「領土は安堵いたします。ご安心なされませ」

この婚姻によって、孟は守られる。

それが、私の役目。父はわずかに目を伏せ、深く頭を下げた。

「……かたじけない」

その声は、かすかに震えていた。

(父上……)

きっと、気づいている。

娘がどのような形で、ここにいるのか。

望まぬ形で差し出され、すでに皇帝に抱かれていることも。

父として、その現実は――耐えがたいものだろう。

それでも。私は、笑みを崩さなかった。
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