敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
「さすがは孟の姫君……もう皇帝陛下のお心を掴んで放さぬようですな」

「これほどの美貌であれば、致し方ありませぬ」

囁き合う声。興味と、羨望と、好奇が入り混じった視線。

すべてが、私に向けられている。

(……見られている)

けれど。逃げることは、もうしない。

私はただ、静かに微笑んだ。人質としてでもなく。

ただの姫としてでもなく。――この人の隣にいる者として。

すると、蒼玄の指がわずかに力を込める。

その熱が、確かに伝わってくる。

(……離れられない)

そう思った。いや――離れることなど、最初から許されていない。

この手に掴まれた瞬間から。

私はもう、蒼玄のものなのだと。
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