敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
やがて私たちは、信の宮殿へと入った。

「……すごい……」

思わず声が漏れる。

大国だと聞いていた。

けれど、目の前に広がる光景は、それ以上だった。

高く連なる回廊。整えられた庭園。どこまでも続くような広さ。

ここが、これから私の居場所になるのだと――ようやく実感する。

案内された部屋もまた、広く美しかった。

「姫様、ようございましたね」

付き従ってきた侍女が、ほっとしたように微笑む。

その言葉に、私も小さく頷いた。

(……これが、私の選んだ道)

そう思った、その時だった。

「気に入ったか」

低い声が、静かに部屋に響く。

振り向くと、そこには――蒼玄。

戦の時とは違う。

整えられた装い。凛とした佇まい。そして、揺るがない威圧。
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