敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
その言葉は、命令であり――同時に、強い執着だった。

衣に触れる手。ゆっくりと距離が縮まる。

逃げようとした腕が、すぐに捕らえられる。

「逃がさないと、言っただろう」

耳元で囁かれる声。その響きに、体が震える。

怖いはずなのに。拒みきれない。

この人の腕の中にいると、なぜか息ができるような気がしてしまう。

(……どうして……)

自分でも分からない。

ただ――蒼玄の視線から、目を逸らせなかった。

強く抱き寄せられる。

そのまま、逃げ場を失うように絡め取られていく。

宮殿の静かな中で。私はまた一歩。

この人から離れられない場所へと、引き込まれていくのだった。

「……ん……」

思わず、吐息がこぼれる。

触れられるたびに、体の奥が熱を帯びていく。

「ああ……」

耳元で、低い声。
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