敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
玉座の上から、低い声が落ちた。

「――信の皇帝・蒼玄だ」

その一言だけで、場の空気が凍りつく。

温もりなど一切ない。ただ、絶対的な支配者の声。

私は無意識に、息を呑んでいた。

「王太子ではなく、姫君をよこしてくるとは……孟国も侮れぬな」

視線が突き刺さる。まるで、品定めでもするかのように。

私は唇を引き結んだ。

逃げてはいけない。ここで怯めば、孟の名を汚す。

だが次の言葉に、思わず心臓が跳ねた。

「その美貌――」

ゆっくりと、彼の口元がわずかに歪む。

「俺を虜にして、信国を滅ぼすつもりか」

(……っ)

冗談のようでいて、冗談ではない声音。

私はすぐに頭を下げた。

「めっそうもございません!」

思わず声が強くなる。
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