敗戦の姫ですが敵国の皇帝に狂おしく溺愛されて逃げられません
震えそうになる喉を押さえつけて、言い切る。

「信国の、ますますの発展に尽力いたします」

広間が静まり返る。

その中で、蒼玄はゆっくりと立ち上がった。

足音が近づいてくる。一歩、また一歩。

やがて、その気配がすぐ目の前で止まった。

顔を上げる勇気はなかった。けれど――

視線だけで、捉えられているのが分かる。

「……顔を上げろ」

命じられ、私はゆっくりと顔を上げた。

その瞬間、至近距離で、蒼玄と目が合う。

息が止まる。

冷たいはずの瞳。なのに、その奥にあるものは――

ただの冷酷ではなかった。

もっと、深くて。もっと、逃げ場のない何か。

「見よ」

低く告げられ、彼は軽く顎を動かす。

私は言われるまま、隣の部屋へ視線を向けた。

そこには――ひとつの寝台。
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