家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています
 一人暮らし向けの物件をいくつも見るうちに、現状が少しずつ身に染みてきた。

 退去費も引っ越し費用も、予想より多くかかりそうだ。

 引っ越したときより、物価がかなり上がってしまったせいだ。

 二ヵ月分の家賃と、退去費用を払ったら、かなりの額が出ていくことになる。

 多少の貯金があっても、財布は心許なくなるだろう。

 そんな金銭面をなんとかするためにも、新しい仕事先も早めに見付けなくてはならない……。

 夕方にはなんだか疲れてしまった。

 押し流されるようにここまで来たけれど、もう脳内がキャパオーバーなのだ。

 ぐったりとソファにもたれた。

 それでも涙は出なかった。

 涙が出ないほどにまだショックが去らないのだ、とぼんやり思い、悲しくなる。

(ダメだ、気分転換しよう。夕ご飯、食べに行こうかな)

 夜になる頃、なんとか自分を奮い立たせて、明莉は身支度をして外へ出た。

 気に入りのレストランで食事をした後、誰もいない家に帰るのが億劫で、何度か行ったことのあるバーへ向かうことにした。

 そこで出会ったのが、ワンナイトの相手になった、あの男性であった。
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