恋愛はめんどくさい!
駅に着いてホームに行くと、ちょうど電車が止まっていた。
車内は空いていて、私たちはドアの近くの席に並んで座った。
先輩が小さな声で囁く。
「一緒に帰るのは初めてだね」
確かにそうだ。
二人とも、同じ高校に通っている。
二人とも、同じ方向の電車に乗っている。
二人で話をしていると、とても楽しい。
あれ? どうして私たちは一緒に帰らないのだろう。それって、なんかおかしくないか?
そんなことを思っていたせいか、私は思わず勢いで言ってしまった。
「なんか、いろいろめんどくさくなってきたので、これからは一緒に帰りましょう!」
特に考えた上での発言ではなかった。
勝手に口が動いていたような感じだった。
だけど、とてもすっきりした気分だった。
先輩はちょっと驚いた表情を見せた後、クスクスと笑い出した。
「ああ、いいね。他にも行きたいところがあるんで、また案内しますよ」
「まだ他にもあるんですね。楽しみにしてます!」
二駅先の乗換駅で、先輩は降りていく。
「じゃあ、また連絡するね」
「はい」
ドアが閉まる直前、先輩は少しだけ振り返って笑った。その笑顔は、いつもと同じようにも、違うようにも見えた。
電車が動き出す。
窓の外の景色が流れていく。
私は座席に背を預け、深く息を吐いた。
――好き。
確かに先輩はそう言った。
その言葉は、私にとってはとても大きな意味を持つ。
ここまで言われたのに、まだ「お試しのお付き合い」のままでいいのだろうか……
ついに、本当の「恋愛」が始まるのかもしれない。いや、本当はもう始まっているのかもしれない。
期待、不安、戸惑い……さまざまな感情が込み上げてきた。
思考が回らない。何をどう考えればいいのかもわからない。
でも……
この今の現状は、とても大切な、絶対になくしたくない宝物のように思えた。