恋愛はめんどくさい!

第六話 一年生の噂話

 あれから星川先輩とは一緒に帰るようになった。
 自然と話すことも増えて、先輩の人となりもだいぶ分かってきた。ピアノを習っていたこと、県内をあちこち散策していること、かわいいものが好きなこと……しっくりくることもあれば、意外な一面もあった。
 とにかく、「星川翔太」という人物の全体像が見えてくることが、とても楽しかった。

 だけど……

 最初の数日は誰も気づいていないように思えたが、もちろんそんなはずがない。噂というものは、見えないところで少しずつ、時には急速に広がっていく。

「ねえ、あれってさ……」
「えー、なにそれほんと?」
「なんか、一緒に帰ってるらしいよ」

 廊下の立ち話の中から、そんな声が聞こえてくることがある。
 わざと聞こえるように言っているのか、ただの偶然なのかはわからない。だけど、確実に私の耳に入ってきている。

 ほとんどの人はやや好意的か無関心といった感じで、私への態度が変わるようなことはなかった。
 けれど、中には――

「いや、さすがにアレはないでしょ」
「身の程知らず、って感じ?」
「わたし、罰ゲームだと思ってた」

 そんな言葉をわざとらしく言う人もいた。
 予想通りである。
 まあ、こんなの中学の頃に比べれば蚊に刺されたようなものだが、だからといって、なんとも思わないというわけではない。

 こんなとき私は、何も言わない、というか言えないのだが、恵は黙っていなかった。

「なんか、聞こえてるんだけど?」
「はぁ? あんたには関係ないでしょう」

 相手の言い方にムッときたのか、恵はじっとその子の顔を見て、目を逸らさずに問い詰める。

「ん? なにムキになってんの? 私にもわかるように聞かせてほしいなー」

 相手は視線が定まらず、かなり動揺している。

「……もう、何なのよ! 別に大沼さんのことだなんて言ってないでしょ!」

 彼女はそう言った後、ハッとなって気まずそうな顔をした。

「……もう、知らないわよ!」

 女の子たちはバツが悪くなったのか、そそくさと退散していった。

「アホか、あいつら」

 恵は強い。しかも、いつも私の味方でいてくれる。そのことには、ほんとに感謝している。

 その日はもう、噂を耳にすることはなかった。

< 16 / 25 >

この作品をシェア

pagetop