恋愛はめんどくさい!
放課後の学校には、昼間とは違った秩序のある賑やかさがある。
運動部の掛け声、吹奏楽部の音色、課題をこなす生徒、打ち合わせをしている先生。
校庭には、校舎を照らす夕日の影が長く伸びていた。
私は部室で鞄の荷物をまとめていた。
残っているのは私一人だけだった。
星川先輩は用事があったらしく、今日は部室には顔を出していない。
私は特に急ぎもせず、ただぼんやりと最近の出来事を思い返していた。
「京子」
恵の声がして、顔を上げる。
彼女は扉の横に立っていた。
「ちょっといい?」
その言い方は、明らかに普段とは違っていた。
私は頷いた。
恵は部室に入り、空いている席に腰を下ろす。
「昼間の件なんだけどね……」
そうだろうな、と思った。
「あれこれ言う人がいるのは、もうどうしようもないよ。気にするなって言うのも無理だとは思うけど……」
「いや、大丈夫だよ」
「そう?」
「もう中学のときとは違うよ」
私の顔を見て、恵は微笑む。
「そっか……京子は強くなったね。いい表情してる」
「恵のおかげかな」
「へへっ、さいですか」
恵はため息をつき、机に肘をついた。
「まあ、たぶんそのうちみんなおとなしくなるよ」
「うん、私もそう思う」
気休めで言っているのかもしれないけど、たぶん恵の認識は当たっている。
ずっとこんなことをやっているほど、みんな暇ではない。そのうち誰も話題にしなくなるだろう。だから、そんなに悲観的にはなっていない。