恋愛はめんどくさい!
先輩はなぜか急にスマホを取り出し、何かを探した後、画面を私に見せた。
そこに映っていたのは、浅岡高校の制服を着た男子の写真だった。
「この人、誰だか分かりますか?」
スマホに映された人物の髪は中途半端に長く、背は高そうだが猫背で、笑ってはいるが表情もぎこちない。正直に言って、いわゆる「典型的なダサい人」に見えた。
……ただ、この顔には見覚えががあった。私の今までの印象とは全く違うので、別人のように見えるけど、明らかに誰だか分かる。
「……これ、先輩……ですよね」
「そうです。高校に入学したときに撮ったやつです」
「……ずいぶんイメージ違いますね……」
先輩は一呼吸して話を始めた。
「僕も、自分の見た目は好きじゃなかったです。今も全然自信はないです。だから、大沼さんが思っていることは、この頃の僕が感じていたことと同じなんじゃないかって思って……」
そう言った後、彼は慌てたように訂正した。
「いや、さすがにこのときの僕と大沼さんを比べるのは申し訳ないです。少なくとも、僕にとっては、大沼さんはかわいいです」
先輩は私をじっと見つめながら、やや早口で話を続けた。
「僕が大沼さんを好きないちばんの理由は、話をしていて楽しいからです。だけど、それだけじゃないです。ちょっとした仕草や、笑っている表情とかも好きなんです。それは、本当です」
やばい。なんか、泣きそうになってきた。
「他の人が何を言っているのかは知りません。でも、僕が思っていることは本当です。だから、否定しないでほしいです」
私は先輩の顔から目を逸らした。日が沈んだばかりの古い町並みは、オレンジ色に染まっていた。
とても綺麗だった。
頭の中にあったモヤモヤが、少しずつ晴れていくような感覚があった。