恋愛はめんどくさい!

最終話 丘の上の公園

 四月下旬、春らしい季節になった。

 星川先輩と付き合うようになってから半年が過ぎた。私は二年生に、先輩は三年生になった。

 もう、噂話をする人はいなかった。


 土曜の授業が終わった後のお昼過ぎ、私たちは小高い丘の上の小さな公園に来ていた。
 場所は、高校から最寄駅を挟んで反対側。公園の隅には、街を見下ろすような大きなクスノキがある。他には、木製のベンチがふたつだけ。たったそれだけの、とても小さな公園。
 私たち二人以外には、人影はなかった。

 今日みたいな天気の良い日には、ここから街並みが一望できる。
 錆びた低い鉄柵の向こうに見えるのは、駅を挟んで左右に伸びる線路と国道。駅の奥の右側には、高校の校舎とグラウンド。更にその先には、青い海。

「ここは静かで気に入ってるんだけど、ちょっと遠いのがね」

 先輩が眼下に広がる景色を見ながら言った。
 私も先輩の隣で、同じ景色を見ている。

「学校からだと、ちょっと遠いですね。駅からも距離ありますし。でも、近いとうちの生徒いっぱい来ますよ」
「ああ、確かにそうかも。むしろ遠くて良かったのかな」

 ここは先輩が一年生のときに、学校周辺を歩き回って見つけた場所らしい。

「ここには、よく来るんですか?」

 私は何気なく聞いてみた。

「いや、すごい久しぶり。一年生のときに何回か来ただけかな。やっぱり遠いんで……」

 先輩には、この半年の間に高校周辺のいろいろな場所を案内してもらった。その中では、ここはたぶんいちばん遠い場所だろう。

 先輩は、地理や歴史が好きというよりは、地元や地域の土地に関することが好き、という方が正しい。
 その方向性は、私と似ている。もしかしたら、先輩は私のそんなところを感じて告白したのかもしれない。
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