皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「いつも悪いね、ありがとう。この茶葉はアンが新しく購入してね、キラナに渡してほしいと頼まれたんだ」


「でも、半月前も美味しい茶葉をいただいたばかりです」


「アンは色々な茶を試すのが趣味だから、すぐに貯蔵庫がいっぱいになるんだ。もらってくれなければ我が家は茶葉屋敷になってしまうよ」


茶目っ気たっぷりに話す姿に思わず頬が緩む。


「なによりキラナの感想が聞けるのはありがたい。買い付けの参考になるからね」


彼の妻、アン夫人は趣味が高じて、小規模ながら茶葉の買い付けと販売を行っている。

お茶はとても好きだけれど、美味しいものはやはり高価だ。

細々と営む薬局は、派手な贅沢ができるほどの売り上げはない。

トルン医師は身寄りのない私をさりげなく支援してくださっている。


「騎士たちに無理難題を言われたり、ひどい態度を取られていないか?」


「先生、心配しすぎよ」


眉根を寄せる医師に、外套を脱ぎながら返答する。

皇城内の治療院は本来私のような平民が勤められる場所ではない。

そもそも通行証すら発行されない。

これもすべて亡き父の親友だったトルン医師が生前の父との約束を守り、私の後見人になってくれたおかげだ。

さらに薬師だった亡き母はトルン医師の妻が患っていた重い病を治した縁もあり夫婦は私を気にかけてくれている。

今では絶滅したとされるアクール大陸最古の一族、メリハ族の末裔という私の最大の秘密を守るために。
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