皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
うなずき、注意された事柄を反芻する私にアレン様が自嘲気味につぶやく。


「窮屈な思いをさせて悪い。結婚式は、一般的に明るく幸せに満ちたもののはずが……制約を強いてばかりだな」


「いいえ、違います。私が自分で決めたのです」


「だが……通常一年以上婚約期間を設けるのにずいぶん短縮してしまった。カナック伯爵家への滞在も短くなっただろう。伯爵夫人とイスズ、エリザに皇城内で待ち構えたように散々叱られたよ」


アレン様の口から公爵令嬢の名前が出た瞬間、心が不安定に揺れ動く。


「カナック伯爵夫人はトルン医師同様、淑女としてとても有名な方だ。皇太子妃殿下たっての願いで、若い女性たちにマナーレッスンとして不定期に皇城内で茶会も催されている」


そういえば、義母から話を聞いた記憶がある。

私を参加させたいが安全性を考慮したミクス皇太子殿下、アレン様に反対されていると渋面を浮かべていた。


「も、申し訳ございません……」


「いや、伯爵夫人の言い分は的を射ている。実際体調不良に気づけなかったのだから。イスズやエリザはキラナに会いたいのが本音だろうが……」


おふたりは以前の件で私に直接礼を伝えたがっているそうだ。


「気が向いたときにでも、よかったら会ってやってくれ」


「……はい、喜んで。でもお礼の言葉は十分いただいておりますので……」


寄せては返す波のように揺れる心から気をそらすように、拳を強く握りしめる。
< 110 / 163 >

この作品をシェア

pagetop