皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
緊張で震えそうになる私の指を、一旦彼が見えない位置で自身の指に絡め、落ち着かせてくれる。

小さな労りに胸が詰まり、言葉にならない温かな感情がこみ上げる。

一方で誓いの言葉を淡々と表情ひとつ変えず口にする彼の姿に胸が締めつけられ、指先が冷えていく。

この結婚式はただの通過儀式でしかない。


――どうか神様、私のためにすべてを犠牲にした優しいこの人をお守りください。


心の中で必死に願い、誓いを口にした。

神殿での儀式を終え、再び馬車に乗り公爵邸に戻る。

待ち構えていたケティやボルトから改めて祝いの言葉をかけられ、礼を告げる。

これから結婚報告を行うため皇城へ向かうと馬車の中でアレン様に言われていた私は、執務室に向かう後ろ姿をただ見つめていた。

メアリやケティは私の部屋の移動をすでに完了していて、手際の良さに舌を巻く。

さらに今夜のため私自身の準備を進めていく。

準備終了後、小さく息を吐いてソファに腰を下ろす。

寝室で待つ勇気はないし、そもそも彼は私を本当の意味で妻にしたいと思っていないだろう。

それでも緊張は隠せない。

貴族同士の婚姻に恋情は二の次にされているが、私たちの婚姻はさらに特殊だ。

ふと視線を近くの鏡に向ける。

彼が心から求める人に会ったことはないけれど、きっと素敵な女性なのだろう。

すべてを理解して了承した婚姻なのに、どうしてこんなに胸が騒いで痛むのか。
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