皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
アクール大陸にはウキヌの森を挟んで北側がグリナダ王国、南側がセレスタ帝国というふたつの大国と五つの小国がある。

どの国もひとりでも多くのメリハ族を保護し、その力の恩恵を受けたいのが本音だ。

とくにグリナダ王国はメリハ族を保護と言いつつ、王家に嫁がせて監視下に置きたがる傾向が強いと聞く。

そのため、周囲にメリハ族の末裔だと知られぬよう、母からは物心ついた頃から何度も注意されてきた。


「メリハ族を追い詰めるのは世界の破滅だといつになったら大陸の国々は学ぶのか。そもそもウキヌの森がこれまで平和だったのは誰のおかげだと思っているのか」


「父様は目立つのが嫌いな人だったもの」


事情を知るが故に憤る医師に肩をすくめて返答する。


「もう……五年になるのか、早いな」


目を伏せてつぶやく姿に、五年前の出来事を思い出す。

同時にひとりの男性の姿が思い浮かび、胸をかきむしられるほどの熱い恋情とさざ波のような不安が呼び起され、心が不安定に揺れ動く。

あの春の緊迫した父の声は今も耳に焼きついて消えずにいる。
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