皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
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『――リラ、キラナ、魔湖周辺で魔獣が多く発生して暴れている。決して屋敷の外に出るな』


家族三人の和やかな昼食を中断し、立ち上がった父は母と私に早口で告げ、素早く執事に対応と指示をする。

私たちが暮らす屋敷はウキヌの森のすぐ近くで、南側の国境付近には各騎士団から集められた騎士たちが常駐する砦がある。

父は多少の事柄は騎士団に依頼せず解決していたが、昔馴染みである騎士団への協力は常に惜しまなかった。

ウキヌの森は深く、魔湖と呼ばれる魔力を多量に含んだ湖が存在している。

この湖は大きさが常に変化しており、一説では深さや場所も日々変わっていると言われている。

魔湖周辺には魔獣が生息している。

魔湖を故意に荒らしたり、なにかの拍子に面積が急激に増えた際に魔獣は暴走し、森を抜けて襲ってくる。

多くの研究者が魔湖について調べているが、面積変化の要因は今も不明だ。

魔湖周辺を上手く避ければ魔獣に遭遇し、襲われる危険性を回避できることが最近やっとわかったのだが、それも森を熟知した案内者がいなければ成り立たない。

隣国に向かうには森を抜けるのが一番の近道だが、危険なため、森の周囲を取り囲むようにぐるりと外側に街道が設けられている。

ウキヌの森は常に謎と不思議な力に満ちており、未知の植物や鉱物をはじめ、薬草の種類も豊富なため、多少の危険を犯しても深部へ足を踏み入れる者が多い。

父は辺境伯として欲に駆られた無知な者を避けるため、森の危険性、立ち入り可能な場所などの案内を積極的に行っていた。
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