皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「私の手にも紅茶がかかって少し痛むの。治していただけない? あなたの噂を聞いて怪我をしている私の大切な侍女たちを今回同行させているの。かわいそうだから治療してくださらない?」


「まあ、もちろんですわ」


私が返事をするより先に義母が勝手に了承する。


「お、お待ちください……私の治癒は万能ではございません。それに今は……」


先天性のものは治せないし、重病や重症の場合は、時間も魔力消費も激しい。

私の魔力量が多いとはいえ、一日に治せる人には限界がある。

それも症状の重さに左右される。

なにより今は手を痛めているし、長い時間集中力が持たないかもしれない。

私の力が困っている人の助けになるのは嬉しいが、望みどおりの結果をもたらせるかはわからない。


「王女様に意見するなんて恥知らずな! 口を慎みなさい! あなたなどなんの役にも立たないのだから、黙って治療すればいいのよ!」


眉をつり上げて義母が叱責し、さらに耳元近くで聞こえよがしにつぶやく。


「グリナダ王太后陛下の御実家、ツヴァル公爵家はカナック伯爵夫人が立ち上げた商会の取引先と懇意にしておられるのよ。もしご機嫌を損ねたら……王太后陛下のお考え次第ではグリナダ王国やその周辺国から茶葉が手に入らなくなる可能性も……ねえ?」


クスクスと声を漏らす姿に、背筋に冷たい汗が滑り落ちる。


「なにより、王女様の願いを断わるなんて、アレンの顔に泥を塗るわねえ」


細めた目で射すくめられ、肩が跳ねる。
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