皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「あの、汚れます、から……」


掠れた声でつぶやく。

彼は紅茶の染みがついた私の手袋を外し、赤くなった部分に息をのむ。

悲痛な目で私を見つめ、私の手の甲に自身の唇をそっと押しつける。

さらに太もも近くの染みにも視線を移しグッと唇を噛みしめていた。

私の体をまるで壊れ物のようにゆっくり抱き上げ、義母に鋭い視線を向ける。


「義母上、これはどういうことです? なぜキラナがこんなところに? キラナは私の妻であると同時に保護すべき存在です。私に黙って強引に連れ出し、治療まで強要するとは。こんな真似が許されるとでも?」


聞いた記憶がないほど低く、怒りの籠もった声でアレン様が義母に尋ねる。

斜め上にある彼の顔はとても強張っていて、義母を睨む目は纏う冷気よりも冷たい。

漏れ出る魔力から、彼の怒りの大きさが伝わってくる。


……私のために、怒ってくれているの?


「あなたこそなにをしているのです? 私は王女様のご命令に従ったまで。大切なご来賓の部屋に無許可で踏み込むなんて、許されませんよ」


「王女の勝手な振る舞いは、義母上とともにすでに皇帝陛下に報告ずみです。来賓として許される行為ではない。あなたが義母でなければ、すぐにでも拘束して投獄しています。まあ、今からも同じような状況になりますが。私はあなたを決して許さない」


アレン様の発言に義母の高慢な態度が崩れ、顔が青ざめていく。
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