皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「キラナ嬢、助けに来るのが遅れて申し訳ない」


ミクス皇太子殿下の謝罪にアレン様の腕の中から首を横に振る。

本当はきちんと立って話すべきなのだろうが、体に力が入らない。

王女と義母がいなくなり安心したせいか、力が抜けて一気に体が重くなる。

ちなみにミクス皇太子殿下とプラント公爵令息はずっと私を〝キラナ嬢〟と呼んでくださっている。


「キラナ? 殿下、申し訳ございませんがキラナをトルン医師の下へ連れて行きます」


私の変化に気づいたアレン様が焦った口調で告げ、ミクス皇太子殿下の返答を待たずに部屋を出る。


「アレン様、私は大丈夫です。来てくださってありがとうございます」


「大事な妻を助けるのは当然だ。体がつらいだろうから話さなくていい」


離れを出て皇城へ続く外廊下を早足で進みながら、彼が告げる。

最初に求婚されたときもこうやって運ばれていたなとふと思い出す。

あのときは恐れと緊張が大きかったが、今は違う。

体は疲弊していても怖さはなく、守られている安心感と愛しさでいっぱいだ。


「平気、ですよ」


そう伝えた途端、彼が柱の裏に回り込み足を止める。

そして屈んで私の唇を自身の唇で優しく塞いだ。


「……無事で良かった」


唇を微かに触れ合わせながら、彼が掠れた声でつぶやく。

絞り出したような声に胸がキュッと締めつけられ、甘く切ない痛みが広がっていく。
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