皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「キラナ!」


痛みで朦朧とする中、アレン様が必死の形相で私の名前を呼び、手を伸ばすのが見えた。

重い瞼を持ち上げ力の入らない腕を動かそうとするが、落下しているようでアレン様との距離はどんどん離れていく。


崖から落ちたのだと今さらながら悟ったとき、頭に浮かんだのはただ彼への感謝だった。

そして最愛の人を守れた喜びで胸の中が温かく満たされていた。

彼を狙った人物、その後の攻撃は心配だが、どうか無事でいてほしい。

今願うのは彼の身の安全、それだけだ。

離れるのはとても悲しく寂しいが、やっと彼を身勝手な運命から解放できる。


きっと、これでよかったのだろう。

私はたくさんの幸せをもらった。

運命の強制力が働いていたとしても、彼は私に愛し愛される喜びを教えてくれた。

もう十分だ。

きちんとお別れとお礼を告げられなかったのは心残りだけれど、彼には本当の運命の相手、想い合える人と出会って幸せになってほしい。


――でも、できるなら私がその相手になりたかった。

アレン様にずっと愛される唯一でありたかった。

せめて最後に彼の役に少しでも立ててよかった。

覚悟を決めて瞼を閉じたとき、愛しいアレン様の笑顔が浮かび、ひと筋の涙が頬を伝っていく。
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