皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「……まさか、魔湖?」


これまで魔湖を見たことはない。

魔湖は一定の場所に留まらないと言われているが、理由も移動場所も魔湖自体の正体もすべてが謎に包まれている。

魔湖近くには魔獣が多いが、今は怪しい気配は感じない。


「キラナ! キラナ!」


何度も名前を呼び、周囲を見回しても最愛の女性の姿はどこにもない。

湖を覗き込み、付近を捜索していれば、キラリと光るものが見えた。


「……腕輪……」


震える指で拾い上げたそれは、俺が贈ったものだった。

間違いない、キラナはこの辺りに落ちたのだ。

それほど時間は経っておらず、魔獣の気配は窺えない。


「魔湖に、落ちた……?」


最悪の予想に血の気が引く。

呼吸が苦しくなり、拾い上げた腕輪を強く握りしめる。

真っ白になる思考の中で、魔湖の中へと急いで足を進める。

助けなければ。

沈んだのなら、きっと苦しい思いをしているはずだ。


きっと間に合う。


絶対に見つけてみせる……!


重い装備を捨て、急いで飛び込み、周囲を探るが藻や魚が泳いでいるだけでキラナの姿は見えない。

水中は暗く淀んでおり視界があまり良くなく、先が見通せない。

息の続く限り泳ぎ、水面に浮かび、また潜るという行為を何度も繰り返す。


「キラナ、どこにいる!?」


絶え間なく名前を呼び、場所を変えて潜るがキラナの姿は依然として見当たらない。 

最悪の事態が頭を掠め、体から力が抜けそうになるが必死に心を奮い起こす。
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