皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「アレン様」


もう一度、今度は先ほどより大きく響いた声に、歩き始めた足が止まる。

恐る恐る振り返れば、魔湖のすぐ傍にキラナが立っていた。


「キ、ラナ……?」


弱々しい声が漏れる。


これは、俺の願望が見せた幻か?


いや、それでもいい。


失いたくない、傍に行きたい。


「キラナ!」


叫んで駆け出す。

短い距離がずいぶんもどかしく遠く感じた。

腕を伸ばし必死で胸の中に閉じ込める。

二度と失わないように、離さないように願いを込めて。


「夢でも、いい。頼むから、いなくならないでくれ……失うのは耐えられない」


彼女に触れる指が震え、声が掠れる。

情けなくてもみっともなくても構わない。

彼女の傍にいられるなら、なにを失ってもいい。


「傍にいて、お願いだ……愛しているんだ」


縋るように強く抱きしめる。


「アレン様、私はここにいます。私もあなたを愛しています」


たどたどしく伝えられ、頬に伸ばされた細い指の温もりに息をのむ。

キラナの紫色の目は涙で潤んでいた。


「本当に……キラナ? 無事、なのか? 怪我は!?」


彼女の指を反射的に握り、目を覗き込む。

慌てて体を離し、全身に視線を向ける。

見たところ、大きな傷もなく出血している様子もなくホッとするが、気は抜けない。

攻撃を受け、あれだけの高さから落下しているのだ。

どこか強く打ったのではないか。
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