皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
『――騎士団に緊急増員要請を少し前に出したばかりなのよ。私は看護師だけど、医師、薬師、看護師も足りていなくて困っていたから助かるわ。早速だけどお願いね』


砦に到着した途端、年配の看護師に仕事を言い渡された。

母の代理だと伝えているはずだが、どうも皇都から派遣されてきた薬師と誤解されているようだった。

訂正すべきか迷ったが、極力素性を知られないほうがいいと考え、うなずく。


『この部屋の患者の包帯を交換してくれる? それと……あなた、誰かの魔力で気分を悪くした経験はある?』


『いいえ、ありません』


『よかった、じゃあここが終わったら重症患者室に向かって。換気と簡単な患者の状態確認をお願いね』


てきぱきと指示を出した後、看護師は慌ただしく部屋を出ていった。

砦の現状がよくわからぬまま包帯交換を終え、報告もあるため先ほどの看護師を捜す。

するとシーツを抱えたふたりの侍女らしき女性が廊下を歩いてきた。


『トゥーイッラ魔術騎士団長はまだお目覚めになっていないんですってね』


『トルン様も治療方法を悩まれているそうよ』


『大陸随一の名医、トルン様が?』


よく知る名前に、思わず足が止まる。
< 22 / 42 >

この作品をシェア

pagetop