皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
『痛っ……!』


声を漏らした途端、急激に魔力を失ったせいか目眩がした。

倒れる、とやってくる衝撃を予想して瞼を閉じる。

けれど衝撃は訪れず、どうしてか温かさと硬さを感じ、恐る恐る目を開ける。

なんと私は半身を起こしたトゥーイッラ魔術騎士団長に抱きとめられていた。


『大丈夫か?』


耳元近くで聞こえる、掠れた低い声に肩がびくりと跳ねる。

初めて耳にする声のはずなのに、なぜかどこかで聞いた気がした。


『……なん、で……? 目覚め、て?』


『君のおかげで助かった』


薄い唇が耳に僅かに触れる。

突然の親密な触れ合いに鼓動が暴れ出す。


『ありがとう』


彼の声はとても心地よく、胸の奥が甘く震えた。

さらに長年の恋人同士のように優しく髪を梳かれる。


こんなの、おかしい。


頭の中でもうひとりの自分が冷静に告げるのに、体が思いどおりに動かせない。

甘えるように彼の胸元にもたれかかってしまう。


『君がここに入ってきたとき、体は動かせなかったけれど呼吸が急に楽になって、声が聞こえてきた』


大きな手が私の両頬を包み込み、顔を掬い上げる。

至近距離に整いすぎた面差しが迫り、唇が優しく塞がれた。

混乱し、狼狽する私の心情を知ってか知らずか、口づけは一層深くなる。

私の唇の合わせ目を舌で愛でて、上唇を甘噛みされる。

長い口づけに呼吸がうまくできなくなり、息苦しさで意識がはっきりしてくる。

伏せられた彼の長いまつ毛を見つめながら腕の中から逃れようともがく。
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