皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「本当に祝宴の席を設けなくてよろしいのですか? 今からでも是非……」


「不要だ」


厳しい表情で断る。


「……キラナ様はお疲れでは? ここから公爵邸まではお時間がかかります」


「ここに長く留まれば、この神殿内の多くの人間に余計な詮索をされる。妻の負担を最優先するなら一刻も早く離れるべきだろう」


そう言って、一旦手をほどき、私の指に自身のものを絡めてくる。

そのまま自身の顎先まで持ち上げ、指先に口づける。

手袋越しとはいえ、親密な仕草に心が揺さぶられ、触れられた部分が熱を帯びる。

思わず声が漏れそうになるのを、唇を嚙んで必死にこらえた。

これは司祭を安心させるための演技だと自分に言い聞かせる。


「わかりました。これからのおふたりに幸多からんことを」


甘い態度に安堵しつつも、少し残念そうな司祭が門扉まで見送ってくれた。

馬車に乗り込む寸前まで、アレン様の口元は緩やかな弧を描いていたが綺麗な二重の目は冷え切ったままだった。

大陸中の王族や数多の有力貴族たちから縁談を申し込まれていたアレン様は、皇帝命令で私との婚姻を了承せざるをえなかった。

想い人と添い遂げる未来までも打ち砕かれて。
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