皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「ヴェールは取るなよ。窓にも近づくな」


馬車の扉が閉まった途端、すぐに手を離した彼が低い声で事務的に告げる。


「はい」


さほど広くない車内にふたりきり、向かい合わせに座る。

豪奢な刺繍と繊細なレースが幾重にも重ね合わされた純白のウエディングドレスは、思った以上に場所を取ってしまう。

私より頭ひとつ分以上長身の彼の邪魔にならないよう、できるだけ体を小さくする。

沈黙の落ちた車内で、夫となった人は長い足と腕を組み、目を閉じていた。

肩まである艶やかな黒髪は緩く結わえて背中に流し、形の良い耳が露わになっている。

長いまつ毛に縁どられた切れ長の二重、美しい紫色の目と高い鼻梁、引き結ばれた薄い唇が小さな顔にバランスよく配置されている。

さらに身長百八十五センチの長い手足とセレスタ帝国トップクラスの魔力量と強さを持ち、職務に責任を持って取り組む二十五歳のアレン様に憧れや恋情を抱く人は多い。


「アレン様、キラナ様、ご結婚おめでとうございます」


夕闇が迫る頃、荘厳な公爵邸に到着した。

執事のボルトが広い玄関ホールで温かく迎え入れてくれる。


「ああ。今から報告のため皇城に向かう」


先に馬車を降りたアレン様は、秘書のギルハンとともに執務室へ歩き出す。
< 4 / 24 >

この作品をシェア

pagetop