皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
『……母様は父様が運命の伴侶じゃなかったら一緒にはならなかった?』


混乱した感情のせいか、とんでもない質問が口から滑り落ちた。

母は私の問いかけに一瞬目を見開き、首を横に振った。


『私は出会ったとき、彼が運命の伴侶だとは知らなかった。ただどうしてか彼の声や面差しが心に強く残っていたの。それから運命の伴侶だとわかったのだけど……でも運命とは関係なく私はあなたのお父様とあなたを愛している、それは確かよ』


凜とした声で言い切る母の目には迷いはなかった。


『運命に不安になると思う。でも落ち着いて自分の気持ちと相手の姿を見つめて。そうすればきっとわかるはずよ』


『よく、わからない』


正直な思いを口にする私に、母が今はそれでいいとゆったり微笑む。


『キラナ、彼が痣の意味を知るのは時間の問題よ。皇家に連なる血脈の公爵家の長子に、メリハ姫の特徴を受け継いだ運命の伴侶がいると知って放置するはずがない』


トゥーイッラ家ほどの家柄ならば皇宮の機密書類を収めた書庫室閲覧も可能なはず。

メリハ族にまつわる書物はおとぎ話程度の者しか一般には出回っていないが、皇宮書庫は違う。

帝国に代々伝わる正しい情報が記載されたものが保管されているという。

それは過去この国とグリナダ王国がひとつの国だった歴史が関係しているらしい。


『トゥーイッラ魔術騎士団長がどういうお考えかはわからないけれど……』


母の困惑の理由はよくわかる。
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