皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
2.再会は皇城で
「――立派な薬師に成長したキラナをワクスに見せてやりたかったな」


トルン医師のつぶやきにハッとし、五年前の記憶から引き戻される。


「私はまだ母様みたいに魔力を薬草に完全にまぜ込めないから」


「あれはリラが作り出した秘術だからね。高度な技術と魔力操作が必要だ。キラナなら必ずできるようになるよ。薬師試験をトップで合格したんだから自信を持ちなさい」


皇都に移動した私たちは、素性を隠したままトルン医師夫妻の旧友としてしばらくトルン医師の屋敷に滞在させてもらっていた。

夫妻は遠慮せずにいつまでもいればいいと私たちを優しく包んでくださった。

トルン医師はトゥーイッラ魔術騎士団長に見つからぬよう配慮しつつ、薬師を目指す私を応援し、試験対策をはじめ環境を整えてくださった。

母には皇宮内での薬師の仕事を紹介してくださった。

おかげで母と私はなんとか生活の基盤を築き、少しずつ新しい暮らしに順応できるようになった。

母は父の遺してくれた財産を使い、小さな家を購入しふたりで移り住んだ。

しばらくして母はトルン医師夫妻の協力の下、小さな薬局を開き、皇城内での薬師の仕事も続けながら私を守り、育ててくれた。
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