皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
もっと教えて欲しい事柄はたくさんあったのに。

話したい出来事だってたくさんあるのに。

父が亡くなり、目に見えるように体力と生気を失った母は三年前、私が十九歳のとき帰らぬ人となった。

母から教わったあらゆる方法を試し、私の魔力を注ぎ治療したけれど、母の命をつなぎ止めることはできなかった。

母は自身の命が尽きる日が近いのを知っていたのだろう。

息を引き取る寸前まで私に寄り添い、たくさんの事柄を教え、薬の調合方法を書いた書物を託してくれた。

最愛の両親を短い時間に立て続けに失った私は、悲しみと孤独に支配されていた。

両親との楽しかった日々を思い出しては泣いてばかりいた。

ふたりに会いたくて傍にいたくて塞ぎ込んでいた。

そんな私を心配してくれたのはトルン医師夫妻だった。

ふたりは私の悲しみに寄り添い、懐かしい話をたくさんして、励まし支えてくれた。

そして私が自活できるよう手を貸してくれた。

一緒に暮らそうとトルン医師夫妻は何度も誘ってくれたが、私は母の遺してくれたこの家を守りたかった。

なによりもいつまでも甘えていてはいけない気がした。

父を亡くしたあの日、母は毅然と前を向き、新しい生活を必死で築き上げてくれた。

最愛の夫を失った母はどれほど悲しく絶望しただろう。

それでも母は自暴自棄にならず、騎士たちの治療に奔走し、屋敷の人々や領民を気にかけ、私を励まし、前を向いていた。

母のように優しく強い素敵な女性に今すぐはなれないけれど、少しでも近づけるように。

今の私ができる精一杯をしよう、泣いてばかりいたらきっと両親が悲しむ。
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