皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
両親の温かく優しい思い出とトルン医師夫妻の支援のおかげで私はなんとか立ち直り、少しずつ新しい生活の一歩を踏み出した。

母の薬を必要としてくれていた人々に薬を届けたい。

薬は高価なものが多く薬師のほとんどが皇城や各騎士団勤めになってしまうため、市井で患者を診れる人はまだまだ少ない。

母はひとりでも多くの人の力になりたがっていた。

未熟な私だが、母の遺志を継いでいきたい。

まずは休業していた薬局を再開させるため、店内の掃除と在庫のチェックから始めた。

母は街の人にとても慕われており、ひとりになった私を心配し、多くの人が様子を見に来てくれて、掃除を手伝ってくれた。

薬局を再開して一年間は、わからない事柄や慣れない出来事を手探りで必死にこなしながら毎日を生きていた。

そのため痣や出自、ひとりになった寂しさをそれほど意識せずにいられた。

二十一歳になり、悲しみを抱えながらも毎日の生活に小さな落ち着きを取り戻せてきたとき、改めてひとりになった現実と向き合うために、母の部屋を掃除した。

すると机の引き出しの奥から一冊の本が出てきた。

手に取り、ページを開いてみたところ、懐かしい母の文字が並んでいた。

どうやら父を亡くしてからの母の日記のようで、さすがに読むのは気が引けて閉じようとしたとき、小さなしおりが挟んであるのに気づいた。

そっと引き出したしおりには私へのメッセージがあった。


【キラナへ あなたに話せなかったメリハ族の秘密を記しています。読んで、そして一日でも長く健やかに暮らしてください。あなたの幸せを心から願っています】
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