皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
母の日記は他言すべきではないかと考え、今もトルン医師に話せていない。

メリハ族の秘密に関わるため、これ以上巻き込まないためにも話すべきではないと考えた。

だが、メリハ族はもちろん母と懇意だった彼らはきっと大方の事柄を知っているのだろう。

二十二歳になり、ひとりで薬局を再開した直後に比べれば薬師としての経験も積み、知識も増えてきた。

もちろんトルン医師や母には遠く及ばないため、今もまだ修業中だ。

皇城の院内には最新の技術や話が入ってくる。

そのためトルン医師から手伝いの声をかけてもらえたのはとてもありがたかった。

もちろんきちんと採用試験は受けた。

少しでもお世話になったトルン医師の役に立てれば嬉しい。


懐かしい記憶をたどりながら、換気のために小さな窓を開ける。

冷えた空気が部屋に流れ込むと同時に明日のセレスタ帝国建国祭準備の賑やかな声が耳に届く。

皇都内は様々な店が出店し、国内外から多くの人が押し寄せて毎年大変な賑わいになる。

母が生きていた頃は、少しの時間だけともに出かけた。

祭りで羽目を外した人が怪我をしたり、人混みで気分が悪くなったりする人も大勢いたので、母は救護の手伝いをしていた。

母が亡くなり、薬局を再開してからは私が引き継いで手伝っている。

今年もそのつもりだったのだが、トルン医師から皇城内の救護室の手伝いを頼まれた。

治療院勤務の女性薬師が体調不良で勤務が難しく、人手が足りないそうだ。

私の事情を知るトルン医師は申し訳なさそうだったが、幸いにも街のほうは、人手が足りていたため、了解を得て今年は皇城内の救護室を担当する。

皇城内では明日、帝国民を招いての舞踏会が開催される。

夕方以降は建国の儀式なども行われる予定だ。
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